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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
と正三君はそんな子供扱いを喜ばない。
「おとなおとなしてきたよ。やっぱり苦労をするんだろうからね」
とお母さんはうれしいやらかなしいやらだった。三人寄ってたかって離れない。それからそれと話がつづく。正三君もそれがなによりのごちそうだ。
「正三かい?」
といって、大学へ通っている兄さんが帰ってきた。
「なんですね? こうもり傘を座敷まで持ってきて」
とお母さんがたしなめた。
「あらあらあら。ぬれててよ」
と貴子姉さんが騒ぎたてた。雨があがったばかりだった。
「玄関に正三の下駄らしいのがあったものだから急いであがってきたんだよ」
と祐助兄さん、あわてている。
「ごぶさたいたしました」
と正三君は改まっておじぎをした。
「よく来たね。泊まってゆくんだろう?」
「はあ」
「どうだい?」
「相変わらずです」
「太ったね、少し」
「そうですか」
「いつ来たんだい?」
「二時頃です」
「それじゃもう大分話したね?」
「はあ」
「なんだかおとなじみてきたよ」
「そんなこともございますまい」
「そのとおりだもの」
「ハッハハハハハ」
「ハッハハハハハ」
と祐助君は大喜びだった。
お母さんや姉さんたちが晩の支度にかかった後、正三君は裕助兄さんの書斎へ行った。