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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

って呼んでみるそうです」

「ふうむ」

「兄さんは始終僕のことを考えていてくれます」

と正三君はうつむいた。

「いい兄さんだ」

「はあ。今に帰ってきたら喜びましょう!」

「…………」

「若様」

「…………」

「どうなさいました?」

「ここが痛い」

と照彦様は拳で喉をたたいた。

「どうなすったんでしょう?」

「僕、わるかった」

「なんでございますか?」

「きみを打ったりしたのはわるかった」

「あんなことはもういいです」

「僕は今きみのお母さんの顔を見た時、きみを大事にしなくてわるかったと思った」

「若様……」

と今度は正三君の喉がつまってきた。

「内藤君、僕はもうわがままをいわない。そのかわりきっと帰ってきてくれたまえよ」

「はあ」

「大丈夫か?」

「はあ」

「それじゃゲンマンをして帰る」

「まだよろしいです」

「いや、もう帰る。元日にきたまえ」

「はあ」

「一日遊ぼう」

「はあ」

「四日の朝、僕が迎えにくる」

「それにはおよびません」

「いや、くる。さあ、ゲンマン」

「はあ」

一家団欒

正三君は三度めの帰宅だった。今までは一晩泊まりだったが、今度は暮れの二十八日から正月の四日までだから、ゆっくりおちつける。お父さんお母さんはむろんのこと、兄さんや姉さんたちまでお客さん扱いにしてくれる。