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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
「泣いたくらいだ」
「お心持ちがお悪いなら、おあやまりになった方がいいでしょう」
「けれども台所と女中部屋へははいれないことになっている」
「それじゃ僕がいってまいりましょうか?」
「うむ、たのむ」
「菊やですね?」
「うむ、菊やだ。一番大きい女だ。あれは力がある。僕はまだ腕が痛い」
と照彦様はようやく笑顔が出た。
正三君は早速使命を果たしたのち、お昼までお庭でお相手をした。帰られては困ると思ったのか、照彦様の方からしきりにごきげんをとる。臣たるもの心あらざるべからずと考えて、
「若様、この芝の上で相撲を取りましょう」
と君の心を伺ってみた。しかし照彦様は、
「いやだ、屋敷外の人は皆強いとお母様がおっしゃった」
といって応じなかった。
昼から若様方はご散髪をなされた。始終散髪屋へ頭を持っていく正三君はこういう工合に散髪屋をよびつけて刈らせる法のあることを初めて発見した。順番がまわってきた時、照彦様は、
「こらこら、ここに大切のこぶができているから、気をつけてくれ」
と注意した。
「はあ、大きなものでございますな。どうなさいました?」
と散髪屋がさわってみた。
「痛い痛い!」