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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

と橋本先生はキビキビした人だった。富士へ登った話をした後、

「それでは、諸君、明後日から」

といいすてて出ていった。

帰りみちに照彦様は、

「始まるとすぐに日曜はうれしいね。きみは家へ帰るかい? 今日昼から」

と急におもいついたようにきいた。

「いいえ」

「ありがたい。なにをして遊ぼう?」

「今日からご自習があるんでしょう?」

「いや、明日の晩さ。僕は頭が悪いから、あさってのことを今日からやっておくとわすれてしまう」

「若様、ご自分で頭が悪いと思っちゃだめですよ」

と正三君は胸にうかんだままを遠慮なくあらわした。今朝から学友の任務ということを考えていたのである。

「そうかね?」

「そうですとも」

「けれどもどうしても頭が悪いんだから仕方がない」

「悪いはずはありません」

「ありませんて、きみは僕の頭の中へはいってみたことがあるか?」

「それはありませんよ。けれども頭の病気をしなければ、悪くなるはずはないじゃありませんか?」

「きみは議論をふっかけるのか?」

「いいえ」

「それならよけいなことをいうな。学校の成績がなによりの証拠だ。僕の頭は悪いにきまっている」

と照彦様はつまらないことをやっきになって主張した。