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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

とたとえをもって誘導を試みた。けっして悪意はない。ところがしきりにせきばらいをしていた安斉さんは、

「吉田さん、ちょっと来てください」

と血相を変えて、先生を学監室へひっぱっていった。

「なにご用でございますか?」

「貴公はふとどき千万だ。学校を百貨店とはなにごとか? 学問はそんなものじゃない」

「物のたとえです」

「たとえにもよりけりだ。孔孟の道を百貨店の仕入れ物と一緒にするばかがどこにある? 教師からしてそういう不料簡だから、世道日におとろえ人心月にすさむばかりだ。ちっと反省しなさい」

「いや、私には私の主張があります」

「それでは反省せんか?」

「しません。ご当家の家庭教師はただいまかぎりごめんこうむります」

と吉田先生も、いっこくものだったから、席をけって帰ってしまった。よほど癪にさわったと見えて、

「……貴公の如き前世紀の怪物が花岡伯爵家の子弟教育に従事するは身の程知らず、ふとどき千万なり。時勢を見よ。時勢を見よ……」

という手紙を辞職届にそえてよこした。どっちもどっちだ。若い先生はたいてい若様がたと安斉先生の間に板ばさみになってとかく長続きがしない。