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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
漢詩人ならば秋雨蕭々とか何とか歌うべきところであろうが、我れわれ俗物は寒い方が身にしみて、早く酒でも飲むか、温かい物でも食うかしなければ凌がれないというので、船を出ると早々にかの飯館に飛込んでしまったのである。
酒をのみ、肉を食って、やや落ちついた時にK君はおもむろに言い出した。
「君は上海で芝居をたびたび観たろうね。」
わたしが芝居好きであることを知っているので、K君はこう言ったのである。私はすぐにうなずいた。
「観たよ。シナの芝居も最初はすこし勝手違いのようだが、たびたび観ていると自然におもしろくなるよ。」
「それは結構だ。僕は退屈しのぎに行ってみようかと思うこともあるが、最初の二、三度で懲りてしまったせいか、どうも足が進まない。」
彼はシナの芝居ばかりでなく、日本の芝居にも趣味をもっていない男であるから、それも無理はないと私は思った。趣味の違った人間を相手にしてシナの芝居を語るのは無益であると思ったので、わたしはその問答を好い加減にして、さらに他の話題に移ろうとすると、きょうのK君は不思議にいつまでも芝居の話を繰返していた。
「日本でも地方の芝居小屋には怪談が往々伝えられるものだ。