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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
兄は十九で京橋の布袋屋という大きい呉服屋さんへ奉公に出ていまして、その年季のあけるのを母は楽しみにしていたのでございます。
叔父は父の弟で、わたくしの母よりも五つの年上で、その頃四十一の前厄だと聞いていました。名は源造といいまして、やはり四谷通りの伝馬町に会津屋という刀屋の店を出していましたので、わたくしの家とは近所でもあり、かたがたしてわたくしの家の後見というようなことになっていました。叔父の女房、すなわち私の叔母にあたります人は、おまんといいまして、その夫婦の間にお定、お由という娘がありまして、姉が十八、妹が十六でございました。
これでまず両方の戸籍しらべも相済みまして、さてこれから本文でございます。前にも申上げました通り、文久三年、この年の二月十三日には十四代将軍が御上洛になりまして、六月の十六日に御帰城になりました。そのお留守中と申すので、どこのお祭りもみな質素に済ませることになりまして、六月のお祭り月にも麹町の山王さまは延期、赤坂の氷川さまもお神輿が渡っただけで、山車も踊り屋台も見合せ、わたくしの近所の天王さまは二十日過ぎになってお祭りをいたしましたが、そういう訳ですから、氏子の町内も軒提灯ぐらいのことで、別になんの催しもございませんでした。