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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

それはそれとして、彼女の死が周囲の空気を暗くしたのは当然であった。矢田の母は気抜けがしたようにがっかりしてしまった。友之助もやけになって諸方を飲みあるいているらしく、毎晩酔って帰って来た。溝口の細君も半病人のようにぼんやりしていた。

こうなって来ると、誰からも好い感じを持たれないのはかのお筆という女の身の上で、彼女がお蝶と友之助とを結びあわせた為に、こんな悲劇が生み出されたらしくも想像されるのであった。お蝶の死因がはっきりしない以上、みだりにお筆を責めるわけにもいかないのであるが、そんな取持ちをしたというだけでも、彼女は良家の家庭に歓迎されるべき資格をうしなっていた。可愛い娘に別れてややヒステリックになっている溝口の細君は、お筆を放逐してくれと夫に迫った。

「あんな女を家へ入れた為にお蝶も死ぬようになったのです。一日も早く逐い出してください。」

それがお筆の耳にもひびいたとみえて、彼女は自分の方から身をひきたいと申し出た。しかし何処かに奉公口を見つけるまでは、どうかここの家に置いてくれというのである。それは無理のないことでもあり、今さら残酷に逐い出すにも忍びないので、溝口も承知してそのままにして置くと、お筆は矢田の母のところへ行って、どこにか相当の奉公口はあるまいかと相談したが、彼女を憎んでいるお銀は相手