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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
一
一
娘は風呂桶から出るところだった。
「どうです、いい躰でしょう旦那」
おかみは嗄れた声でそっと囁いた。
「あれだけきれいな躰は千人にひとりもありやしません、こんな商売をしているから、ずいぶんたくさん女の躰を見てますがね、ああいうのこそほんとの餅肌とか羽二重肌とか云うんですよ、あれだけの縹緻だし肉付きもいいし、……まあよく見て下さい。これが気にいらなかったら罰が当りますよ」
そう云っておかみは去っていった。此処は行燈部屋のような暗い長四畳で、壁の一部に二寸角の穴が切ってあり、黒い紗が二重に張ってある。向う側はそこだけ横に黒い砂ずりになっているから、こちらで燈でもつけない限りまったくわからない。和助はその紗へ顔を押しつけるような姿勢で、風呂場の中をじっと見まもった。
娘の名はおけい、年は十七だという。小づくりの緊った躰つきで、着物を着ていたときとは見違えるほど肉付きがいい。殊に胸のふくらみと腰の豊かな線とは、年より遙かに早熟た唆るようなまるみをもっている。湯に温められた肌は薄桃色に染まり、それをぼうと光暈が包んでいるようにみえた。
――いい躰だ。これまで見たなかでは慥かに群をぬいている。