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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
二
をしよう」
「――はい、どうぞお願い申します」
「では一杯ついで貰おうか」
和助は盃を持った。それはそのときまで酒を待っていたことになにか意味があるとでも云いたそうな、かなり勿躰ぶった手つきであった。
「この盃でおまえも一つ、これもまあかたちだから」彼はおけいに盃を渡し、自分で酌をしてやりながら云った、「――そして、それを飲んだらおかみとその家主さんを呼んで来て呉れ、話を定めて、渡す物を渡すとしよう、たぶん四五日うちに迎えの駕籠を遣ることになるだろうから」
おけいはひと息に飲んで、そしておかみを呼びに立とうとした。すると躓きでもしたように、よろめいて片方の膝を突いた。和助はすばやく手を伸ばして彼女を支え、
「しびれがきれたのだろう、危ないよ」
と云って起してやろうとした。
「済みません、いいえもう大丈夫です」
おけいはそっと和助の手から離れ、すり足をしながら出ていった。和助はそのうしろ姿を見おくりながら、いま掴んだ娘の手のしめっぽい柔らかな、しっとりと冷たい感触を慥かめるように右の手をじっと握り緊めながら、唇のまわりに貪慾そうな微笑をうかべた。
二
尾花屋を出たおけいと万兵衛は、蛤町まで殆ど口をきかずに歩いた。