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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
三
「ああそうか、そういう手があるわねえ、だけどおけいちゃん、あの人ときたら知ってのとおりぐずだから」
「だっておばさんが隣にいて呉れるじゃないの」おけいは賢げに笑った、「それから、あたしはっきり云うから怒らないでね、っていうのがお金のことなの、あたし阿母さんの世話をして貰うために人を頼みたいって云ったら、毎月べつに一分ずつ呉れることになったの、それで横網のおばさんにがまんして貰いたいんだけれど」
「いいわ、それ貰うわ」
おむらは眼をふっとうるませた。
「おけいちゃんからお金なんて、一文だって貰うつもりはないけれど、断わればあんたの気の済まないのがわかるし、正直いえば姉さんだって助かるんだから」
「うれしいわ、あたしどなられやしないかと思ってびくびくものだったのよ」
「こんなときでなけりゃどなるくらいじゃ済まないよ」おむらも笑った、「――それじゃあ横網のほうへすぐに知らせておくからね」
こう云ってまもなくおむらは帰っていった。
三
母親は夕餉まで眼をさまさなかった。支度が出来たので起して喰べさせ、煎薬と頓服をのませると、びっくりするほどの効きめで、すぐにまた眠りだした。