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おいついたゆめ

追いついた夢

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页

青空文庫

「そうするよりしようがないの、そのほかにはどうしようもないのよ」

「――金はもう、受取っちまったのか」

おけいはちょっと黙ってから答えた。

「四五日うちに迎えの駕籠が来るわ」

宇之吉はふいにおけいをひき寄せた。両手で激しく抱き緊め、自分の頬をぐいぐいとおけいのへすりつけた。おけいは頭が痺れたようになり、自分では知らずに、宇之吉を抱いて泣きだしていた。

「おれは放したくない、どこへも遣りたくない、おれは一緒になって貰いたかったんだ、おけいちゃんと一緒になれると思っていたんだ」

「うれしいわ、宇之さん、あたしもそう思っていたのよ、あたしも宇之さんのお嫁になりたかったのよ」

「そんなら、それがもし本当なら」

こう云って宇之吉はおけいの肩を掴み、押し離すようにして顔を覗きこんだ。

「おけいちゃん、おれと一緒に逃げて呉れ」

「――逃げて、どうするの」

「二人で暮すんだ、おれには職がある、職が無くったってなんでもやる、おれもおけいちゃんもずいぶん辛抱してきた、もうたくさんだ、おれたちだって生きたいように生きていい筈だ、逃げようおけいちゃん、どこか遠いところへいって二人で暮そう」