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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
金杉の「梅川」というのがゆきつけの舟宿であった。預けてあった包を持って舟を借り、川を下って海へ出た。和助はかなり巧みに櫓を使うことができる。海へ出ると西へ向って漕ぎながら、もう決してうしろへは振返らなかった。
「――とうとう今日という日がきた、夢のような望みだったが、とうとうその夢がおれのものになる」
独りでこう呟きながら、夢の実現と、世間に対する復讐の完成のために、彼は声をあげて喚きたいような衝動を感じた。
品川の沖で日が昇った。海の上では日光は暑い、たちまち汗がふきだした。和助は着物を脱ぎ、次には半身裸になった。強い日光と、休みなしに漕いでいるためか、頭が痛くなり、ときどき眼がかすむように思えた。
――もうひと息だ、松が見えるまで、それですべてが済むんだ。
鮫州へかかると遠く松並木が見えた。鈴ヶ森であろう、頭の痛みは時をきって強くなり、かなり烈しく痛む。そして汗をかいているのに、それが熱いのか冷たいのかはっきりしない。気分も重苦しく、胸がむかついてきた。
「ひと休みしよう、それに着替えをしてもいいじぶんだ」
和助は櫓をあげて休んだ。
日並がいいのでかなり釣舟が出ていた。