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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
「あんたが女に生れて来たんでなければね、そうすればこんなとき悲しい思いをしなくてもよかったのに、でも女だからこれだけのことができるんだよ、おけいちゃん、これが男であんたの年であってごらん、それこそ阿母さんに薬ひとつ満足に買ってやれやしないから」
「そんなこともないだろうけれど」
「だって宇之さんをごらんな、二十一にもなっていっぱしの職人でいて、弟の竹ちゃんがあの大怪我をしたとき、やっぱりお医者にはかけきれなかったじゃないか、あのときすっかり治るまでお医者にかかっていたら、竹ちゃんも死なずに済んだかもしれないのに、……それを思えばおたみさんは仕合せだよ、あんたにしたってまだ年は若いし、縹緻はいいし、いまにこんなことも笑い話にするようなときがきっとやってくるよ、生きているうちには悪いことばかりはないものさ、くよくよしないで、おけいちゃんらしく辛抱してお呉れよ」
「大丈夫よおばさん、あたしちっともくよくよなんかしてはいないわ、こうするよりほかにどうしようもないんだもの、恥ずかしいだの悲しいだの辛いだの、そんなこと思ってたら一日だって生きてゆかれやしないわ」
おけいはこう云って、きらきらするような眼でおむらを見て、明るく笑った。