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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
「それよりあたし、おばさんに頼みがあるの」
「水臭いことお云いでないよ、なんて、啖呵をきるほどのがらでもないが、なによ改まって」
「あたしが出ていったあとのことよ」
和助との約束をおけいはあらまし話した。
「そういうわけで、毎月の物を尾花屋へ取りにゆくとか、あっちの人との面倒な事は大家さんがして呉れることになったけれど、阿母さんの世話はやっぱりおばさんにお願いしたいのよ」
「わかりきってるじゃないかそんなこと、あたしはこの話が出た初めから」
「そうじゃないの、それはいまさらお願いもなにもないんだけれど、そうじゃなく、これまでと違ってあたしがいなくなるでしょう。昼間はともかく夜なかまで世話をして頂くわけにはいかないわ、それであたし考えたのよ」
おむらに松乃という姉があった。本所の横網に住んでいてときどき遊びに来る、おけいもよく知っているが、年はもう五十だろう。亭主は網舟の船頭であったが、去年の冬、十九になる息子の平吉といっしょに沖へ出て、突風に遭って二人とも死んでしまった。……それ以来は針仕事などして暮しているが、おけいはその人に家へ来て貰えまいかと云った。