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かみなりもんいほく

雷門以北

久保田 万太郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页

青空文庫

それ以前にもましてだん/\成長した。あらたな繁栄はそれに伴う輝かな「感謝」と「希望」とを、どんな「横町」でもの、どんな「露地」でものすみ/″\にまで行渡らせた。――いえば、いままで、「広小路」を描きつつ、「仲見世」に筆をやりつつ、「震災」の二字のあまりに不必要なことをひそかにわたしは驚いたのである……

が、前のものは――その逆に「古い浅草」は……

読者よ、わずかな間でいい、わたしと一緒に待乳山へ上っていただきたい。

そこに、まずわたしたちは、かつてのあの「額堂」のかげの失われたのを淋しく見出すであろう。つぎに、わたしたちは、本堂のうしろの、銀杏だの、椎だの、槙だののひよわい若木のむれにまじって、ありし日の大きな木の、劫火に焦げたままのあさましいその肌を日にさらし、雨にうたせているのを心細く見出すであろう。そうしてつぎに……いや、それよりも、そうした木立の間から山谷堀の方をみるのがいい。――むかしながらの、お歯黒のように澱んだ古い掘割の水のいろ。――が、それにつづいた慶養寺の墓地を越して、つつぬけに、そのまま遠く、折からの曇った空の下に千住のガスタンクのはる/″\うち霞んでみえるむなしさをわたしたちは何とみたらいいだろう?――眼を遮るものといってはただ、その慶養寺の境内の不思議に焼け残った小さな鐘楼と、もえ