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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

だいぶ尋ね廻ったようなお言葉であったが」

「実は」

いいかけると、源内、

「まず……」と蒲団を縁先へ出して、「お掛け下さい」

「いただきます。宗法でござれば……」

天蓋の会釈をして、ゆったりと腰を下ろし、根瘤の煙草盆に一服つけて、のどかに紫煙をくゆらしながら、徐々と訊ねだした話はこうである。

禅定寺峠から、万吉を江戸に立たせ、自分だけ大阪へ戻ってきた弦之丞。訊ねれば、すぐにも会えると思っていた住吉村へ行ってみて、思わぬ失望をした。

ぬきや屋敷は、住む人もなく荒廃して、そこには、以前のようなやからも住んでいなければ、常木鴻山も源内もすでにいなかった。

浜の者に聞きあわせると、なんでも四、五日ほど前の夜に、手が入って上げられたという話。これは理に合わないので、なおも詮索してみた揚句、どうも蜂須賀家の者に意図を知られて、姿をくらましたらしく思われた。

つい、一月余りの日が空しく過ぎて、いつか秋風が立ちそめた。

そういつまでも、鴻山の所在を探しているゆとりもない身――弦之丞は阿州屋敷へそれとなく目をつけ初めた。ところで、今日も安治川尻から何気なく波除山の裾へ来たところで、偶然、源内の住居を覗いた訳であった。