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こくびゃくストーリー

黒白ストーリー

杉山 萠円

「黒白」1925(大正14)年5月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,356 字 · 42 页

青空文庫

――2――

三平はあとを追っかけた。近くなると見えかくれに随いて行った。

――2――

女はガードを潜って水道橋を渡って築土八幡の近くのとある横路地を這入った。三平も続いて這入った。

娘は突当りの小格子を開けて中に這入った。小格子の前には「質屋」と看板が掛かっていた。

三平はその前に立ってあたりを見まわした。

小格子の中から禿頭のおやじが出て来た。三平を見るとウロン臭そうに睨んだ。

三平は思切って鳥打帽を脱いでお辞儀をした。

失礼ですが……

今お帰りになったのは……

お宅のお嬢様ですか……

禿頭はだまって三平を見上げ見下した。ギョロリと眼を光らした。

そうです……

私の娘です……

何か御用ですか……

三平はホッと胸を撫で下した。

ああ助かった……

やっと安心した……

禿頭は呆れた。三平の様子を穴のあく程見た。

三平は禿頭の顔を見た。急に声を落して眼を円くして云った。

タ大変ですぜ……

お嬢さんはね……

どっかの男と……

今夜駈け落ちの相談を……

三平は突き飛ばされて尻餅を搗いた。

禿頭は睨み付けた。

馬鹿野郎……

あっちへ行け……

三平は禿頭の見幕に驚いた。起き上りながらあと退りをした。