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こくびゃくストーリー
黒白ストーリー
杉山 萠円
「黒白」1925(大正14)年5月号~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,356 字 · 42 页
――16――
その時来かかった王冠堂の番頭久四郎は徳市とすれ違うとふり向いた。たしかに徳市と認めると帽子を眉深くしてあとをつけた。
――16――
徳市はボンヤリと山勘横町へ来た。憲作の事務所の扉を押した。階段を昇った。
久四郎は入口の処であたりを見まわした。入口の扉に耳を寄せて徳市の足音を聴いた。そのまま近所の物蔭へ隠れた。
徳市は屋根裏の室へ来た。ストーブに石炭を投げ込んで火をつけてあたりながら考えた。
憲作が帰って来た。徳市の眼の前に突立って見下した。
どうしたんだ……
女に振られたのか……
徳市は力なく頭を左右に振った。
憲作は腰を下して徳市と膝をつき合わせた。
何でも話してみろ……
力になってやる……
徳市はうるさそうに頭を振った。
憲作はポケットから新しい札の束を出して机の上に積んでトンとたたいた。徳市の顔をグッと見込んで笑った。
徳市はチラリと札を見た。手を振って顔をそむけた。
憲作は妙な顔をした。札を掴んで徳市の鼻の先に突きつけてしきりに効能を説き立てた。
徳市はいよいよ浮かぬ顔で聞いた。おしまいに憲作が突き出した札を押しのけながら腹立たし気に云った。