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こくびゃくストーリー

黒白ストーリー

杉山 萠円

「黒白」1925(大正14)年5月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,356 字 · 42 页

青空文庫

――3――

帽子を脱いでペコペコした。

済みませんが給金をすこし……

吉は彼を押し飛ばした。

間抜けめ……

貴様みたいな奴は喰わしておくだけでも損が立つんだ……

吉はそのままスタスタと去った。

徳市はうなだれて合宿の方へ歩いた。途中のバアの前で何度も立ち止まったが、懐へ手を入れると諦めて歩き出した。

――3――

徳市はとある淋しい横町を通りかかった。

立派な紳士が一人徳市のうしろから現れた。徳市の様子に眼をつけるとツカツカと近寄って肩に手をかけた。

徳市は立ち止ってふり返った。

紳士はニコニコして云った。

若いの……

一寸そこまで来ないか……

うまい仕事があるんだが……

徳市は帽子を脱いだ。オズオズしながら云った。

どんな御用ですか旦那……

紳士は又ニッコリした。

今夜十二時迄……

君の身体を借してくれれば……

十円上げるがどうだね……

徳市は妙な顔をした。しかし又思い直した。決心したらしくお辞儀をした。

お伴しましょう……

紳士はうなずいた。ポケットから煙草を出して徳市にすすめた。マッチを擦って徳市のにつけてやり自分も吸い付けると、先に立ってあるき初めた。