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あだこ
あだこ
山本 周五郎
「小説倶楽部」1958(昭和33)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,762 字 · 46 页
四
食い物の味はまちまちで、からすぎたり甘すぎたりするが、二十日ほど経つうちには馴れたのか、それとも半三郎の好みがわかったのか、そういうむらも感じられなくなった。
あだこは針も上手であった。よごれたまま押込んで置いた彼の衣類を出して、次つぎに解いて洗い張りをし、巧みに仕立て直した。単衣を袷にしたり、袷を羽折にしたり、脆くなったところはうまく継いだりはいだりした。半三郎が退屈しているなとみると、そういう繕い物などを持ってそばへ来て、針を動かしながら話をする。彼は無関心に聞いているが、言葉の妙な訛りと、話の可笑しさについふきだすようなこともあった。
「あだこは妙な言葉を使うな」と或るとき彼が云った、「そのそうだべおん、というのはどういう意味だ」
「まあ恥ずかしい」あだこは両手で顔を隠し、だが、すぐにしゃんとして答えた、「それは、そうでしょうということでございます」
「ほかにもいろいろ云うようだが、どこの言葉なんだ」
「はい」とあだこは答えた、「津軽です」
半三郎は静かに眼をそむけた。
四
思ったとおりだ、と半三郎は心の中で云った。十兵衛は津軽へ国目付にいって来た、そのとき伴れて来たものだろう、そしてここへ入りこませたのだ。