轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あだこ

あだこ

山本 周五郎

「小説倶楽部」1958(昭和33)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,762 字 · 46 页

青空文庫

あだこの眼から涙がこぼれ、声があわれにふるえた。激しい感情、たとえば憎悪と悲嘆といったようなものが、心の中でせめぎあい、どちらをも抑制することができない、というふうに半三郎には受取れた。

「いいえ、これ以上は云えません」とあだこは首を振った、「あたしがうちにいてはいけなかったんです、あたしがいなければ母はおちつけるし、きっとうちの中もうまくいっていると思います」

年が七つも下の良人を持った母、同じ家にいる年頃の娘。そして娘は家出をしなければならなかった。半三郎にはおよそ事情がわかるように思えた。その母は親であるよりも、もっと多く女であったのだろう。そして娘もまた女としての敏感さで、そのことに気づいたのだ。

「えらいな」と彼は云った、「よく思いきって出た、あだこはえらいよ」

あだこは泣き笑いをしながら、両手の指で眼を拭いた。そのとき半三郎の表情が急に変り、口をなかばあけて、訝しそうにあだこの顔をみつめた。

「実の親子でいてもこんなことがあるのかと、情けなくって、あたしずいぶん悲しゅうございました」と彼女は眼を拭きながら云った、「でもいまはもう悲しくはありません、もうすっかりあずましごすてす」