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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

どこまでも一小売店としての分に止まり、同業小売店と繁栄のよろこびを共にしてこそ本懐である。

次に今日の繁昌は、ひとえにこれを社会一般の恩として感謝すべきであって、これをさらに明日においていっそうの期待を予想する不遜は許されるべきものではない。盈つれば欠くるという。なおも店の拡張を計って天の冥護に離れ、人の同情を失えばどうなるか。思いをここに致せばなかなか現状の不自由等をかこつべきではないのである。

さらに経済の実際より見るも、店を改造するには少なくとも三十万円を必要とする。また販売部を拡張すれば製造場も同時に取り拡げざるを得ず、これがためにさらに二十万円くらいの資金を要し、合計五十万円にも及び、その金利と償却、新たに嵩む照明費と税金、使用人の増加等を計算する時は、今日の売価をおよそ六、七分方引き上げねば収支償うことができないのである。それではお客様へ行きとどくようにと思うての改造が、かえって負担をおかけする結果となり、まずそこから中村屋の商売の合理化は崩壊し始める。売品が高価となるからはそれに伴うサーヴィスとして、百貨店などのように遠方まで無料で配達するなどのことも必要となり、経費はいたずらに嵩むばかりで、経営に無理があればそれは必ずお客様に映じ、わざわざお出向き下さるお客も次第に減ずるであろう。