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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

模倣を排す

模倣を排す

私は店格ということをいい、これを店の持前持味というように解釈したが、ここではその店格なるものの根本について話してみたい。

人間はその面の異なる如く、その性質を異にし、神と崇められる者があれば悪魔と嫌われる者もあり、じつに千差万別、人生に複雑な妙味を現し、また尋常一様に見られる中にも個人個人で多少とも異なるところがあるものである。

ところがその各自異なる人間の仕事であるにもかかわらず、商店にはとかく雷同性が多く、個性の認められる店はきわめて少ない。そしてこの雷同性がいつも共倒れの原因となっているのは、じつに悲しむべき現象である。かつて日露戦争直後、東京で最初にロシヤパンを売り出し、珍しいので相当繁昌した店があった。ところがたちまち十数店の同業者が同じロシヤパンを売り出し、競争となって共に没落してしまった。

これなどほんの一例にすぎず、ある店が何か工夫して売行きよしと見ると、同業者は一斉にこれを模倣して、たちまちその特色を失わしめてしまうのが、ほとんど世間おきまりのようである。我が日本人は世界中で最も善良な性質の持主であるが、模倣に長じて独創に乏しいところはたしかに一大欠点といわねばならない。