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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

浅野さんの懺悔

性の問題にはことに厳粛な思想を抱いている私は、それがためかえって実際に疎いところがあっていわゆる性教育に関して全然無知識でしたが、お互いにこの状態にいることのいかに危険であるかを痛感させられました。幸い路加少年は早く手当がとどいたので危いところで助かりました。もし当人が秘密にして姑息な方法で治そうとしていたら、可哀想に一生を暗闇に葬らなくてはならないのでした。恐しいことです。

浅野さんの懺悔

浅野民次郎のことは「黙移」の中に詳しく書きましたから、ここでは最も尊い懺悔の一節だけを記すことにします。

浅野さんは救世軍の兵士として、中村屋から毎晩行軍(街頭説教)に出かけました。当時救世軍はまだ甚だしい経済難のうちにあって、給与があまり僅少なためにたいていおかずを食べることが出来ず、塩など舐めて済ます有様でしたから、浅野さんは店で食事をするだけでも倖せだなどと言っていました。中村屋とてもその頃は充分な手当を支給出来なかったから、ずいぶん不自由な思いをさせたことでしょう。

ある晩私たちは店を閉じてから例の三畳の間で帳面調べをしていましたが、そこへ浅野さんが入って来て、何か用事ありげにもじもじしています。