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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

ところがここで私は意外な光景を見た。当時その孤児院の仕事は相当に聞えていて、世間の同情も厚いことであるから、院児たちは氏の庇護の下に不自由なく暮しているであろうと思いのほか、食べたい盛りの子供たちに薄いお粥が僅かに二杯ずつより与えられないという窮状であった。子供たちが本郷夫妻に取りすがって『も少し頂戴よ』『頂戴よ』と哀願するのに、氏はそれを与えることが出来ない。私はこれを黙視するに堪えず、幸いいま自分には暇があることでもあり、少しでも孤児院のために義金を集めることが出来たらと考えて、まず東北仙台に向かった。

何故仙台に行ったかというと、仙台にはその頃東北学院長として、基督教界の偉人押川方義氏が居られた。私は早稲田在学時代、牛込教会に通うて基督教を聴き、大いにその感化を受けて、信州に帰郷後は伝道をも助け、禁酒禁煙の運動をも行っていたほどで、まだ面識はなかったけれど、押川先生には大いに信頼するところがあった。

幸いにも私が仙台に入った日は日曜日で、ちょうど仙台教会に押川先生の説教があった。私は汽車から降りたままで教会に行き、先生の説教の後を受けて、孤児院の窮状を会衆に訴えた。