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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

で歓迎されたが、僅か数年の試験に五、六万円の赤字を出し、ついに中止されたとのことであった。しかしその後も、英国帰りの伴田という人が蒲田町でやっているということが判った。

私は伴田氏の鶏舎を訪ねていろいろ実状を調べたところ、丸鳥で百匁七十銭程度に取引きされて、当時の並鳥二十銭に対して三倍半の値で、フランスの四倍にやや接近していたが、ここの肥育鶏は惜しいことに種々雑多の種類を集めたもので、味が平均せぬ憾みがあった。私はこれをさらに一歩進めて食用鶏として最も味の優れている軍鶏の一種とし、自分の手で飼育すれば完全なものが得られるのだという結論に達し、そこで初めて山梨県に飼育場を設けたのであった。

飼育場主任としてこの仕事に当った河野豊信氏は、農林省の畜産試験場で養鶏の研究をしていた人で、ここに初めて本格的の肥育が試みられることになった。その後年々需要が増加し、そこだけの設備では供給が出来なくなったので千葉県に移転し、これでようやく一年間を通じて同じ優良鶏肉を供給し得る、完全な飼育場を持つことが出来たのである。

こうして私のパリ以来の懸案は解決されたが、初め考えたよりもその実行ははるかに困難であった。