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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其四
態あわれにて、襤褸衣服にそそけ髪ますます悲しき風情なるが、つくづく独り歎ずる時しも、台所の劃りの破れ障子がらりと開けて、母様これを見てくれ、と猪之が云うにびっくりして、汝はいつからそこにいた、と云いながら見れば、四分板六分板の切れ端を積んで現然と真似び建てたる五重塔、思わず母親涙になって、おお好い児ぞと声曇らし、いきなり猪之に抱きつきぬ。
其四
当時に有名の番匠川越の源太が受け負いて作りなしたる谷中感応寺の、どこに一つ批点を打つべきところあろうはずなく、五十畳敷格天井の本堂、橋をあざむく長き廻廊、幾部かの客殿、大和尚が居室、茶室、学徒所化の居るべきところ、庫裡、浴室、玄関まで、あるは荘厳を尽しあるは堅固を極め、あるは清らかにあるは寂びておのおのそのよろしきに適い、結構少しも申し分なし。そもそも微々たる旧基を振るいてかほどの大寺を成せるは誰ぞ。法諱を聞けばそのころの三歳児も合掌礼拝すべきほど世に知られたる宇陀の朗円上人とて、早くより身延の山に螢雪の苦学を積まれ、中ごろ六十余州に雲水の修行をかさね、毘婆舎那の三行に寂静の慧剣を礪ぎ、四種の悉檀に済度の法音を響かせられたる