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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

其五

ものの世話人となり用人となり、万事万端執り行うてやがて立派に成就しけるとは、聞いてさえ小気味のよき話なり。

しかるに悉皆成就の暁、用人頭の為右衛門普請諸入用諸雑費一切しめくくり、手脱ることなく決算したるになお大金の剰れるあり。これをばいかになすべきと役僧の円道もろとも、髪ある頭に髪なき頭突き合わせて相談したれど別に殊勝なる分別も出でず、田地を買わんか畠買わんか、田も畠も余るほど寄附のあれば今さらまたこの浄財をそのようなことに費すにも及ばじと思案にあまして、面倒なりよきに計らえと皺枯れたる御声にて云いたまわんは知れてあれど、恐る恐る円道ある時、思さるる用途もやと伺いしに、塔を建てよとただ一言云われしぎり振り向きもしたまわず、鼈甲縁の大きなる眼鏡の中より微かなる眼の光りを放たれて、何の経やら論やらを黙々と読み続けられけるが、いよいよ塔の建つに定まって例の源太に、積り書出せと円道が命令けしを、知ってか知らずにか上人様にお目通り願いたしと、のっそりが来しは今より二月ほど前なりし。

其五

紺とはいえど汗に褪め風に化りて異な色になりし上、幾たびか洗い濯がれたる