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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
ためそれとしも見えず、襟の記印の字さえ朧げとなりし絆纏を着て、補綴のあたりし古股引をはきたる男の、髪は塵埃に塗れて白け、面は日に焼けて品格なき風采のなおさら品格なきが、うろうろのそのそと感応寺の大門を入りにかかるを、門番尖り声で何者ぞと怪しみ誰何せば、びっくりしてしばらく眼を見張り、ようやく腰を屈めて馬鹿丁寧に、大工の十兵衛と申しまする、御普請につきましてお願いに出ました、とおずおず云う風態の何となく腑には落ちねど、大工とあるに多方源太が弟子かなんぞの使いに来たりしものならんと推察して、通れと一言押柄に許しける。
十兵衛これに力を得て、四方を見廻わしながら森厳しき玄関前にさしかかり、お頼申すと二三度いえば鼠衣の青黛頭、可愛らしき小坊主の、おおと答えて障子引き開けしが、応接に慣れたるものの眼捷く人を見て、敷台までも下りず突っ立ちながら、用事なら庫裡の方へ廻れ、と情なく云い捨てて障子ぴっしゃり、後はどこやらの樹頭に啼く鵯の声ばかりして音もなく響きもなし。なるほどと独り言しつつ十兵衛庫裡にまわりてまた案内を請えば、用人為右衛門仔細らしき理屈顔して立ち出で、見なれぬ