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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
れる長五徳を磨きおとしを拭き銅壺の蓋まで奇麗にして、さて南部霰地の大鉄瓶をちゃんとかけし後、石尊様詣りのついでに箱根へ寄って来しものが姉御へ御土産とくれたらしき寄木細工の小繊麗なる煙草箱を、右の手に持った鼈甲管の煙管で引き寄せ、長閑に一服吸うて線香の煙るように緩々と煙りを噴き出し、思わず知らず太息吐いて、多分は良人の手に入るであろうが憎いのっそりめが対うへ廻り、去年使うてやった恩も忘れ上人様に胡麻摺り込んで、たってこん度の仕事をしょうと身の分も知らずに願いを上げたとやら、清吉の話しでは上人様に依怙贔屓のお情はあっても、名さえ響かぬのっそりに大切の仕事を任せらるることは檀家方の手前寄進者方の手前もむつかしかろうなれば、大丈夫此方に命けらるるにきまったこと、よしまたのっそりに命けらるればとて彼奴にできる仕事でもなく、彼奴の下に立って働く者もあるまいなれば見事でかし損ずるは眼に見えたこととのよしなれど、早く良人がいよいよ御用命かったと笑い顔して帰って来られればよい、類の少い仕事だけに是非して見たい受け合って見たい、欲徳はどうでも関わぬ、谷中感応寺の五重塔は川越の源太が作りおった、ああよくでかした