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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
いて洲に達せしが、この時弟ははやその橋を難なく渡り超えかくるを見るより兄もその橋の端を一揺り揺り動かせば、もとより丸木の橋なるゆえ弟も堪らず水に落ち、わずかに長者の立ったるところへ濡れ滴りて這い上った、その時長者は歎息して、汝たちには何と見ゆる、今汝らが足踏みかけしよりこの洲はたちまち前と異なり、磧は黒く醜くなり沙は黄ばめる普通の沙となれり、見よ見よいかにと告げ知らするに二人は驚き、眼をりて見れば全く父の言葉に少しも違わぬ沙磧、ああかかるもの取らんとて可愛き弟を悩ませしか、尊き兄を溺らせしかと兄弟ともに慚じ悲しみて、弟の袂を兄は絞り兄の衣裾を弟は絞りて互いにいたわり慰めけるが、かの橋をまた引き来たりて洲の後面なる流れに打ちかけ、はやこの洲には用なければなおもあなたに遊び歩かん、汝たちまずこれを渡れと、長者の言葉に兄弟は顔を見合いて先刻には似ず、兄上先にお渡りなされ、弟よ先に渡るがよいと譲り合いしが、年順なれば兄まず渡るその時に、転びやすきを気遣いて弟は端を揺がぬようしかと抑ゆる、その次に弟渡れば兄もまた揺がぬように抑えやり、長者は苦なく飛び越えて、三人ともにいと長閑く