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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

ものゆえ、できるだけは卑劣なを根性に着けず瀟洒と世を奇麗に渡りさえすればそれで好いわ、と云いさしてぐいと仰飲ぎ、後は芝居の噂やら弟子どもが行状の噂、真に罪なき雑話を下物に酒も過ぎぬほど心よく飲んで、下卑た体裁ではあれどとり膳睦まじく飯を喫了り、多方もう十兵衛が来そうなものと何事もせず待ちかくるに、時は空しく経過て障子の日一尺動けどなお見えず、二尺も移れどなお見えず。

是非先方より頭を低くし身を縮めて此方へ相談に来たり、何とぞ半分なりと仕事をわけて下されと、今日の上人様のお慈愛深きお言葉を頼りに泣きついても頼みをかけべきに、何としてこうは遅きや、思いあきらめて望みを捨て、もはや相談にも及ばずとて独りわが家に燻り居るか、それともまた此方より行くを待って居るか、もしも此方の行くを待って居るということならばあまり増長した了見なれど、まさかにそのような高慢気も出すまじ、例ののっそりで悠長に構えて居るだけのことならんが、さても気の長い男め迂濶にもほどのあれと、煙草ばかりいたずらに喫かしいて、待つには短き日も随分長かりしに、それさえ暮れて群烏塒に帰るころとなれば、さすがに心おもしろからずようやく癇癪の起り起りて耐えきれずなりし潮先、据えられし晩食の膳に対うとそのまま云いわけばかりに箸をつけて茶さえゆるりとは飲ま