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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
源太はいよいよ気を静め、語気なだらかに説き出すは、まあ遠慮もなく外見もつくらず我の方から打ち明けようが、なんと十兵衛こうしてはくれぬか、せっかく汝も望みをかけ天晴れ名誉の仕事をして持ったる腕の光をあらわし、欲徳ではない職人の本望を見事に遂げて、末代に十兵衛という男が意匠ぶり細工ぶりこれ視て知れと残そうつもりであろうが、察しもつこう我とてもそれは同じこと、さらにあるべき普請ではなし、取り外っては一生にまた出逢うことはおぼつかないなれば、源太は源太で我が意匠ぶり細工ぶりを是非遺したいは、理屈を自分のためにつけて云えば我はまあ感応寺の出入り、汝はなんの縁もないなり、我は先口、汝は後なり、我は頼まれて設計までしたに汝は頼まれはせず、他の口から云うたらばまた我は受け負うても相応、汝が身柄では不相応と誰しも難をするであろう、だとて我が今理屈を味方にするでもない、世間を味方にするでもない、汝が手腕のありながら不幸せで居るというも知って居る、汝が平素薄命を口へこそ出さね、腹の底ではどのくらい泣いて居るというも知って居る、我を汝の身にしては堪忍のできぬほど悲しい