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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
江戸ッ子腹の、源太は柔和く問いかくれば、聞き居るお浪は嬉しさの骨身に浸みて、親方様ああありがとうござりますると口には出さねど、舌よりも真実を語る涙をば溢らす眼に、返辞せぬ夫の方を気遣いて、見れば男は露一厘身動きなさず無言にて思案の頭重く低れ、ぽろりぽろりと膝の上に散らす涙珠の零ちて声あり。
源太も今は無言となりしばらくひとり考えしが、十兵衛汝はまだわからぬか、それとも不足とおもうのか、なるほどせっかく望んだことを二人でするは口惜しかろ、しかも源太を心にして副になるのは口惜しかろ、ええ負けてやれこうしてやろう、源太は副になってもよい汝を心に立てるほどに、さあさあ清く承知して二人でしょうと合点せい、と己が望みは無理に折り、思いきってぞ云い放つ。とッとんでもない親方様、たとえ十兵衛気が狂えばとてどうしてそうはできますものぞ、もったいない、とあわてて云うに、そうなら我の異見につくか、とただ一言に返されて、それは、と窮るをまた追っかけ、汝を心に立てようか乃至それでも不足か、と烈しく突かれて度を失う傍にて女房が気もわくせき、親方様の御異見になぜまあ早く付かれぬ、と責むるがごとく恨みわび、言葉そぞろに勧むれば十兵衛ついに絶体絶命、下げたる