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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

妾でさえ思うものを、他人はなんと噂さするであろう、ましてや親方様は定めし憎いのっそりめと怒ってござろう、お吉様はなおさら義理知らずの奴めと恨んでござろう、今日は大抵どちらにか任すと一言上人様のお定めなさるはずとて、今朝出て行かれしがまだ帰られず、どうか今度の仕事だけはあれほど吾夫は望んで居らるるとも此方は分に応ぜず、親方には義理もありかたがた親方の方に上人様の任さるればよいと思うような気持もするし、また親方様の大気にて別段怒りもなさらずば、吾夫にさせて見事成就させたいような気持もする、ええ気の揉める、どうなることか、とても良人にはお任せなさるまいがもしもいよいよ吾夫のすることになったら、どのようにまあ親方様お吉様の腹立てらるるか知れぬ、ああ心配に頭脳の痛む、またこれが知れたらば女の要らぬ無益心配、それゆえいつも身体の弱いと、有情くて無理な叱言を受くるであろう、もう止めましょ止めましょ、ああ痛、と薄痘痕のある蒼い顔を蹙めながら即効紙の貼ってある左右の顳を、縫い物捨てて両手で圧える女の、齢は二十五六、眼鼻立ちも醜からねど美味きもの食わぬに膩気少く肌理荒れたる