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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

頷き、清は今がたすやすや睡ついて起きそうにもない容態じゃが、疵というて別にあるでもなし頭の顱骨を打ち破ったわけでもなければ、整骨医師の先刻云うには、ひどく逆上したところを滅茶滅茶に撲たれたため一時は気絶までもしたれ、保証大したことはない由、見たくばちょっと覗いて見よ、と先に立って導く後につき行くお吉、三畳ばかりの部屋の中に一切夢で眠り居る清吉を見るに、顔も頭も膨れ上りて、このように撲ってなしたる鋭次の酷さが恨めしきまで可憫なる態なれど、済んだことの是非もなく、座に戻って鋭次に対い、我夫では必ず清吉がよけいな手出しに腹を立ち、お上人様やら十兵衛への義理をかねて酷く叱るか出入りを禁むるか何とかするでござりましょうが、元はといえば清吉が自分の意恨でしたではなし、つまりは此方のことのため、筋の違った腹立ちをついむらむらとしたのみなれば、妾はどうも我夫のするばかりを見て居るわけには行かず、ことさら少しわけあって妾がどうとかしてやらねばこの胸の済まぬ仕誼もあり、それやこれやをいろいろと案じた末に浮んだは一年か半年ほど清吉に此地退かする