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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
しかし、その後わしが何をしていたか、現在のわしが何者であるか、同じ家に住んでいながら、お前達は、まるで知らないのだ。
わしはこの七年間、お前達からも、友達からも気違い扱いを受けて来た。頭が変になった失職技師として物笑いの的になって来た。世間の凡人共の目には、わしは正に一人の気違い親爺にすぎなかったのだ。彼等には偉大なる夢を理解する力がなかった。彼等は一に二をたせば三だとしか考えられないのだ。それが八にも十にもなり得ることを知らぬのだ。おこがましいことを云うようだが、わしが世間から受けた軽蔑は、コペルニクスが当時の世間から受けた軽蔑と同じものであったのだ」
新一は目を丸くして、狂ったような父の饒舌を聴いていた。日頃控え目で黙り屋の父が、こんな誇大妄想狂のような熱弁を振おうとは、全く思いもかけぬことであった。夢でも見ているのではないかと、わが目わが耳を疑う外はなかった。
五十嵐老博士は、まだ長椅子の前を右に左に歩きつづけながら、顔を赤らめ、目を輝かせ、二十歳の青年の情熱をもって、止めどもないお喋べりをつづけるのであった。
「新一、お前は語学の方をやったのだから、数学には暗い。