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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

老博士の遺骸は、上田市から運ばれた棺に納められて、三日の間別荘に置かれていた。云うまでもなく新一の帰宅を待つためである。しかし新一は帰って来なかった。そこで望月少佐と南博士の責任において、簡素な葬儀が取りおこなわれ、五十嵐博士の遺骸は上田市の火葬場の煙となった。

別荘の住人一人として老博士の急逝に涙を流さぬものはなかったが、共働者の学者達、望月少佐をはじめ憲兵隊の人々の歎きは又一入であった。個人の死をいたむというよりは、国家の損失を歎いたのである。戦局を一挙に決せんとする大計画の挫折を悔んだのである。

望月少佐がこのことに関する全責任を一身に負うたのはいうまでもない。では少佐はこの事件から身を引いたのであるか。決してそうではなかった。逆に少佐はこれまでよりも更らに深く事件の中に身を投じて行ったのである。

木本博士、南博士その他設計班の学者達は、善後策について慎重な協議を行い、陸軍省の指示を待って、この大事業を彼等の手によって継続して行くことを決意した。この超速航空機の設計については、五十嵐博士でなくては処理し得ない部分が非常に多かったが、それにも拘らず、学者達は万難を排して、五十嵐博士の遺業の完成に邁進することを誓い合った。