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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

「マア、そうでしたの」

京子は一昨日、裏山で新一に語った彼女の幻覚の一つが、既にして的中したことを知って、ふるえ戦いた。

やがて新一は医務室のベッドに運ばれ、本格の手当を受けることとなった。南博士をはじめ設計班の学者達が次々と病室を見舞った。京子は職長の許しを得て、工場を休み、新一の枕頭を離れなかった。

結局、曲者は捉え得なかった。技師長は新一の言葉どおり、工場内の全員をして捜索に当らせたけれども、遂にそれらしい人物を発見することが出来なかった。附近の村々、乗合自動車の停車場等にも人を派して調べたが、何の手掛りも掴むことが出来なかった。

小型スーツケースに仕掛けた時限爆弾は、工場内のもっとも重要なる三ヶ所の建物において発見せられた。その爆弾は時計を使用し、最小容積に最大の爆発力を納めた極めて巧妙な仕掛けのものであった。

爆発時間はいずれも深夜であり、三つのうちの二つまでは、爆発と同時に火災を誘発するような場所に隠してあった。もし新一がこのことを気附かなかったならば、大和航空機製作所は一夜にして灰燼に帰していたかも知れないのである。その功績、まことに顕著と云わなければならない。