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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

エ、新一、わしが少しばかり気が変になるのも無理ではないだろう」

長椅子の横の小卓に、番茶を入れた大きな湯呑みが二つ並んでいた。今し方女中に運ばせたものだ。博士はその一つを取って、ゴクゴクと一息に飲み干し、そのまま腕組みをして目をつむって、深々と長椅子に身を沈めた。

全く聞き役ばかりを勤めていた新一は、この時、同じ長椅子の上で、グッと父の方に向き直って、やや改まった調子で口を切った。

「僕にはまだ、よくのみこめませんよ。僕は科学のことは分らないし、それに夢のように大きな問題なんだもの。しかし、僕はお父さんの言葉をそのまま信じる。そして、そういうお父さんの子である事を誇らしく思います。

お父さんが永い間、何だかむずかしい科学上の問題と取り組んで、苦しんでいたことは知っています。だが、それがこれほど大きな問題だろうとは誰も知らなかったのです。

お母さんなんか、世間体を苦にして、いろいろ口やかましく云いましたね。僕だって、心の中ではお母さんに同感していなかったとは云えない。お父さん、勘弁して下さい。すみませんでした。

お父さんの発明が、世界の歴史を変えるということは、僕のような凡人には、まだ漠然としか分らない。