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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

その証拠には新一の態度がいよいよ真剣味を加え、彼の身辺に息づまるような緊張が感じられたのである。

新一は望月少佐に懐中電燈の光を地下室の一方の隅に向けるように合図をしておいて、その隅にしゃがむと、コンクリートの壁の床から五六寸の個所に指をかけて何かした。すると、そこに隠し戸があって、スルスルと開き、一尺四方ほどの壁の窪みが現われた。新一はその中に手を入れて、ラジオのレシーバーのようなものを取り出し、それを少佐の方にさし出して、身振りで耳に当てることを勧めた。少佐は帽子をとり、レシーバーを両耳に固定させた。

次に新一はその隅のコンクリートの床の或る個所に指をかけて、栓でも抜くように引張った。すると、丸いコンクリートの蓋がとれて、そのあとに径一寸ほどの小さな穴が開いた。彼は手真似で少佐にそこを覗いて見よと勧めた。少佐はいわれるままに、半ば腹這いになって、その覗き穴に目を近づけた。

望月少佐はそのことを出発に先立って新一から聞いていたのであるが、現実に覗き穴を覗き、レシーバーによって床下からの声を聴き取るにおよんで、悪人共の計画の周到巧緻に一驚を喫しないではいられなかった。