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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
京子さん、僕があの時、母が息を引取ったすぐあとで、コンクリートの塊りで自分の指を打ちくだいたことを記憶しているでしょう。あなたは気でも狂ったのかとびっくりしていましたね。だが、僕は指一本無くしたぐらいでは到底癒すことの出来ない心の痛手にうちひしがれていたのです。
結局、僕は日本人に立帰る外はなかったのです。その外に道が無かったのです。日本人になるということが僕にとって何を意味するか、お分りですか。若し僕がアメリカ人でないとしたら、僕が今までやって来たことは、すべて極悪非道の大罪です。何度死んでも足らないくらいです。しかし、僕の命は一つしかありません。せめてもの罪亡ぼしに、僕の知っている限りのアメリカのスパイ共を一網打尽した上で、自決するという決心をしました。そして今こそ、その時が来たのです」
望月少佐はそれを止めようとはしなかった。京子は茫然自失していた。新一は何のさまたげもなく、用意の丸薬を飲み下すことができた。
偉大なる夢
「新一君、君に一言聞かせることがある。我慢して聞くんだ。いいか」
望月少佐は椅子の下にくずおれている新一の肩をゆすぶった。新一は苦悶に歪んだ顔を起して、見えぬ目に少佐の声を見上げた。