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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
午前七時、地方裁判所から検事の一行が到着した。検事は古参の憲兵曹長と警察署長と協議の上、取敢えず邸内の人々の取調べを行った。
午前八時少しすぎ、自動車の警笛とともに、東京憲兵隊司令部の望月憲兵少佐が来着した。少佐は昨夜の事件をしっていたわけではない。
五十嵐博士の重要書類窃盗未遂事件、護衛憲兵の増派と、五十嵐博士一行の周囲にただならぬ陰謀のおこなわれつつある情勢捨ておきがたく、新一の懇請に応じて単身現場に出向いてきたのであるが、時すでに遅く、五十嵐博士は重傷を負い、その取調べのため出張せる検事と相前後して到着する羽目となったのである。
検事は事件の性質上、取調べの主導権を望月少佐にゆずる態度をとった。少佐はまず一室に七人の部下をあつめ、三十分以上にわたって密談をとげたのち、検事と立会いの上、あらためて邸内の人々を一人一人呼びよせ、老博士負傷前後の事情を聴取した。新一、京子、南博士らも個別に綿密な質問をうけた。
事情聴取を終ると、少佐は五十嵐博士の病室を見舞った。医師と看護婦のほかは何人も同席させず、二十分ほどもついやして、容態を聴取った上、邸内の人々が病室に立入ることを禁じ、入口に憲兵の一人を絶えず立番させることとした。