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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
息子の新一さえも少佐の許しを受けずして父を見舞う事は出来なくなった。
五十嵐博士夫人は昨夜の打撃によって高熱を発し病床の人となっていた。検事や望月少佐の質問にも応じ得ぬほどの容態であった。人々は協議の上、老博士重傷のことは暫らく夫人の耳に入れぬこととし、その病室を他にうつすよう取計らった。
新一が望月少佐と差向いでゆっくり話をする機会を得たのは、昼食後のことであった。京子は泊りこみの村の娘二人の外にもう二人の応援を頼み、多人数の食事の用意に忙殺された。食事が終ると検事と警察署長はすべてを憲兵隊の取計らいに任せ、医師と看護婦だけを残して、一先ず別荘を引上げて行った。その一行を見送ってから、望月少佐は新一を人なき設計室に誘いこみ、打ちとけて語り合う機会を作った。
二人は例の大煖炉のある広間の片隅に、テーブルをさしはさんで向い合っていた。少佐はかつて折鞄の隠し場所となった二重クッションの安楽椅子にもたれ、煙草をふかしながら、ときどき窓越しに庭の芝生を見おろしていた。そこには部下の憲兵の一人が忠実に見張りを勤めている姿が小さく眺められた。
少佐は鼠色の背広服を着ていた。