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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
五分刈り頭と日焼けのした浅黒い顔とが軍人を感じさせるほか、容貌にも言語動作にも殊さら軍人らしいものはなかった。四十歳は越しているに違いなかったが、坊主頭のせいか若々しく見えた。理智的な引締った頬、美しい口髭、笑うと非常に愛嬌のある白い歯並、全体に親しみのある顔立ちであったが、その中に一重瞼の余り大きくない目だけが、時折り相手の腹の底を射通すような鋭い輝きを見せた。
「もう一日早く来て下されば、こんなことは起らないですんだかも知れません」
新一が少佐を尊敬していることは、その見上げるような目附きによっても察せられた。この人物のいるところには如何なる犯罪も起り得ないと、固く信じているように見えた。
少佐は愛嬌のある歯並を見せて笑った。
「僕が昨日来れば、相手は一昨日このことを決行していたに違いない」
「じゃ、犯人はあなたの来られるのを知っていたとおっしゃるのですか」
「無論知っていた。こいつは何もかも知っている奴です」
「敵国の間諜と考える外ありませんね」
新一は一際声を低くした。
「断定はできない。しかし十分考え得ることです。ところで君の意見を聞きたいのだが、万一お父さんが再起できないとすると、ここの設計事業は中止の外はないのか、それとも他の学者達の手でつづけて行くことができるのかという点です」