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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

二人偶然私の部屋で落ち合った時だったから、

「昨夜は吃驚したぜ」

と私は諷するように言ってやった。

「静岡県の方が強かったろう?」

「何あに、群馬県の方が強かった」

「本当にやるんだなあ、君も」

「小突かれちゃ黙っていられないよ」

「人前があったからね」

「おれも騎虎の勢さ」

「ハッハヽヽヽ」

「ハッハヽヽヽ」

と二人はもう何等蟠りがない。

懇親会は喧嘩で中止になったが、私達同級生は間もなく胸襟を開いて交際を始めた。同じ寄宿舎にいて、何も彼も一緒だから事が早い。通学生は佐伯君と谷君丈けだった。この二人は、

「僕達は腰掛だよ」

「然うとも。明治学園、飯が食えん。こんなところに卒業するまでいちゃ大変だ」

と言って、官立学校の試験を受ける為めに、英語の授業丈け択り食いをしていた。

「彼奴等は何ういう料簡だろう? 母校を馬鹿にしている」

と高木君が憤慨した。しかし母校ばかりでない。二人は江戸っ子を鼻にかけて、私達地方出の新入生を馬鹿にした。訳解の輪講中、私がつかえると、

「新田のお兄さん、しっかり!」

なぞと冷かした。厭な奴等だと思って、此方も口をきかない。その中に野崎君が、

「佐伯って奴は生意気だ」