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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「中途半端だよ。それぐらい申訳がないと思うなら、腹を切るなり出家をするなり、もっと徹底的にやれば宜い」

「人のことだと思って、簡単に片付けるね。それが出来ないから煩悶しているのさ」

「しかし君、老河原の煩悶や迷信は全く別問題として考える方が宜いぜ」

「うむ」

「単に縁談として慎重に研究しなければいけない」

「無論その積りさ」

「僕は好い縁談だと思っている」

「それで、もう取定めて来たんだよ」

「何あんだ。僕の分別を借りに来たんじゃないのか?」

「顔を借りに来たんだ。仲人になってくれ給え」

「よし。引受けた。実は僕も折を見て勧めたいと思っていたところだ」

と柴田君は快諾してくれた。

父親からは、

「……其許の気に入りしものなれば当方に異存も無之次第ながら、余り颯急のことにて聊か不安を感じ申候。先方の氏素性は無論充分御調査のことと存候が、如何に候哉。尚お条件として是非年内に挙式の必要有之旨、如何の次第に御座候哉。母も案じ居候間、委細の事情お包み無之お知らせ被下度候云々」

と問い返して来た。私は河原老人の経歴から迷信を詳しく書き認めて誤解のないように願った。父親はそれで納得してくれたが、母親は取越苦労ばかりする。