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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

家へ帰ると忙しい。

「操や」

「何でございますか?」

と何方も小さいのを抱いていての応対だ。

「お母さんが心配していたけれども、全くアベコベだったね」

「えゝ」

「実に能く生れる」

「オホヽ」

「それに皆丈夫だ」

「でも御勉強が出来なくてお気の毒ね」

「何あに、仕方がないさ。何処でも然うらしいよ」

「あなた」

「何だい?」

「私、お気の毒だと思って、未だ申上げませんでしたが……」

「何だ?」

「又少し……」

「え?」

「何うも然うらしいのよ」

「ふうむ」

「今からですと、又年子ですわ」

「驚いたなあ。おや/\、おシッコだよ」

と私も溜まらない。

四国に三年いる中に又二人生れて、中国へ転任した。子供は毎年又は一年置きに殖えるけれど、俸給の方は三年ぐらいたゝないと上らないから、兎角生活が苦しくなる。上ったところを又上って転任することに心掛けた。当時、九州にも好い口があった。それは仲人の柴田君の周旋で、有名な温泉町の中学校だった。土地がらだから、物価は少し高いが、借家にも温泉が引いてある。もう一級上るまで湯治をする積りで行って見ないかという勧誘だった。

「温泉場なんて困りますわ」

と妻は頭から反対した。