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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

しかしその折は、

「おや/\、機先を制したな」

と思って、私も省る。常に無理を通しているのだから、稀には譲ってやる。妻は天下晴れてプン/\憤れるから頗る得意だが、此方が相手にならないので気抜けがして、間もなく笑顔に戻る。

私達は多産の夫婦だった。十一月に結婚して、翌年の秋に長男が生れた。以来一年置き若しくは毎年人口が増殖して十人に達した。双子丈けは生まなかったが、三番目も四番目も年子だった。錚々館へ独身で来た私は、五年勤めて四国へ転任する時、夫婦二人に子供が三人になっていた。

「一番お若いですな」

と褒められた男も、次の任地では、

「ナカ/\大勢さんですな?」

「はあ。三人あります」

「それは/\。いや、それにしてはお若いです」

ともう条件がついた。

未だ三十にはならなかったが、私はこの辺で頭の発達が止まってしまったように思う。以前は学問に多少野心があったけれど、四つ二つ一つと泣くのが揃っていては、もう勉強どころでない。私は殊に騒々しいことが嫌いだ。妻の外に手がないから、自然加勢をする。昔は子供を抱いている同僚を見ると向上心がないように思って心窃かに侮ったものだが、それが自分の身の上へ廻って来た。